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パピエラボ 江藤公昭

interview

INSIDE/OUTSIDE【002】 Interview with パピエラボ 江藤公昭

「紙にまつわるお店」をテーマに、活版印刷を始めさまざまな
プロダクトや印刷を提案するストア、パピエラボの江藤公昭氏。
Landscape Productsから独立し、オリジナリティあふれる視点で、豊かで質の高いモノを送り出している。

―Landscape Productsに入社する前は、どうされていたんですか?

元々は福岡でグラフィックデザイナーとして働いていました。
東京はスピードが何もかも早そうで自分のペースには合わないと思っていたんだけど、
Landscape Productsの中原さんとの縁で、25歳の頃に上京しました。Landscape Productsは当時から、
家具や器、民藝の展示会企画など様々なプロジェクトを複合的に進めていることに興味を持っていました。
僕自身、グラフィックだけじゃなくて、家具や建築と色々な興味が湧いてきて、一分野にとどまらず、
もっと全体的な審美眼を身に付けたいと思ったんです。

パピエラボ

―これまでパピエラボで手がけたプロダクトについて教えてください。

個人的に6年以上シリーズで続けているのは「家」のモチーフ。
あるとき、全世界どこでも同じフォルムをしている家の形が気になりはじめました。
あのフォルムには多分、人間の帰巣本能や懐しさを感じさせるものがありますよね。
三角と四角、というあれだけシンプルな形でも、ちょっとした角度で見え方が変わったり、
奥行きがあったり、素材に対しての大きさだったり、どれもバランスが難しいんです。
このフォルムのきれいな形を理解することは、いいものづくりに繋がると思いました。
それは機能美にも通じる理念だと思っています。

―パピエラボのはじまりについて教えてください。

2007年5月に世田谷区の生活工房が主催した「活版再生展」に関わった
3人、僕と、高田くん、武井さんの3人が集まって、誕生しました。
当時、その展覧会では、僕は空間設計、高田くんはアートディレクター、
武井さんはプリンティング周辺のディレクターという関係でした。
イベントを開催するにあたって皆で勉強を始めて、深く掘っていくうちにわかることがあったんです。
これは何か、形に残した方がいいかもしれないと、全員が直感的に感じました。
これは、きっとこのタイミングでなければ生まれなかったことだと思います。

―「活版印刷」との関わりはそこからスタートしたんですね。

当初からパピエラボのコンセプトは活版印刷に限らず、「紙にまつわるお店」です。
そのコンテンツのひとつに活版印刷があります。僕が海外に行ったときなんかに
かっこいいなと思ったカードの多くが活版印刷で作られたもので、
コレクター的に集め始めたのが活版印刷に興味を持ったきっかけです。
はじめは国内の活版印刷の市場がなかなかわからず、印刷所にも外部の人間が入り込みづらい分野でした。
可能性を探るうちに、パピエラボという開けた空間で色んなひとに知ってもらえるといいな、と思うようになりました。

―最近では活版印刷は非常にポピュラーなものになってきましたよね。

活版印刷を続けていくためには、職人さんたちの持続性が絶対に必要なので、
こうして多くの人が活版印刷を使うようになったことはうれしいことだと思います。
ただ、ブームに消費されてしまうことにも懸念はあります。よくメディアでは活版に対して、
温もりとか味わいという印象を与えがちですが、本当の良さはそれだけではないと思うんですよね。
温もりや味わいがあるからいいわけではなくて、やっぱり、デザインや素材感、
職人さんの癖や時代感などが重要だったりする。こうしたものを扱うには、今っぽさも重要な要素ですし、
昔ながらの質の良さを第三者がうまくピックして、編集することが大事だと思っています。

―江藤さんにとってパピエラボとは?

面白い感覚を持った人たちが集まってくるお店です。
もちろんお店は紙にまつわるものを取り扱っていますが、僕自身はファッションも音楽も大好きだし、
自分の興味がある面白い人たちと関わっていくことがこの場所の持つ魅力です。
自分にとってメディアのひとつが、このパピエラボと言えるかもしれないですね。

―パピエラボのメンバーについては?

普段は3人とも別々の仕事をしています。音楽の好みも似ているし、
洋服の趣味も近いから、気の合う仲間という感じですね。
普段からあまりミーティングをする方ではないですが、何かを決めなきゃいけないときは、
机の上では何も生まれないと思っているので、街を散歩したりしながら話してます。
会っても全く本題に触れず終わることもしょっちゅうだけど、それぞれに信頼があるから、
任せていても大丈夫なんです。お互いに変な嫉妬もなく、いい関係で仕事ができているのは
それぞれが自分の仕事に自信を持ってやっているからじゃないかな。

―江藤さんは毎日、店頭に立たれていますよね。
お店が持つ場所の力について、感じることはありますか?

忙しいときでもお店に立ち続けるのは、色んな価値観の人と話せる面白さがあるからなんですよね。
僕は積極的に接客するタイプではないんだけど、質問されれば倍返しは心がけています。
自然と会話が生まれて、人と人が繋がっていく場所が理想ですね。

ありがとうございました。
現在、fairgroundとパピエラボのコラボレーション企画も予定しています。
今後のお知らせにご期待ください!

撮影協力:BRAVO
撮影:yop
編集:arina