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Elephant*吉田安成

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INSIDE / OUTSIDE【006】Interview with Elephant*吉田安成

表参道の喧騒を抜け、小道にひっそりと佇む一軒のアパート。
光の差し込む穏やかなアパートの空間でこだわりのテーブルウェアを扱うお店Elephant*。
Elaphant*のオーナー、吉田安成氏にインタビューを行った。

INSIDE

―まずはElephant*を始めた経緯を教えてください。

25歳の時に上京し、専門学校に通った後デザイン会社に入りました。
当時所属していたデザイン会社で忙しい日々が続く中、
自分が考えていたデザインの仕事と会社の業務内容にギャップが生まれだし
徐々に、自分の仕事について考え直すようになりました。
そんな時に、北欧系の家具を扱う1店のお店に出会ったことがきっかけで
この業界に興味を持つようになったんです。

それまでインテリアにはさほど興味がなかったんですが、
そのお店に出会った瞬間に、お店の圧倒的な世界観とその背景の奥深さに打ちのめされてしまったんです。
その後、そのお店でどうしても働きたくて退路を断つ覚悟でデザイナーの仕事を辞め、
半年ぐらいは毎月のようにそのお店に通いアピールを続けました。
でも結局そこで働くことは出来なくて、
自分にできることはないかと考えるようになり、場所や費用のかかる家具ではなく、
小物を扱うことから始め、5年前にElephant*をオープンしました。

最初はWebだけでお店を運営していたんですが、商品が売れるのは嬉しい反面、お客さんの顔も見えないし、
ただ売れた商品を送るだけという単純作業は面白みに欠けていました。
また、取り扱っている商品も古い物だったりするので、
web上だけでモノのもつ魅力を伝えることは難しく、店舗を持つことを考えるようになりました。
そんな時に知り合いがやっていたお店がちょうど転居するという話しを聞いて
譲って頂き、今の場所にお店をオープンすることになったんです。

場所を譲って下さった方はこの業界ではパイオニアのような存在で、
今でもすごくお世話になっています。

―お店のコンセプトを教えてください。

“More beautiful things for everday use”(日常使いで、より美しいものを)。

それまでは上流階級の人に向けられていたデザインを、
庶民の日常生活にも取り入れていこうという運動が
1919年にスウェーデンで起きた時に掲げられたスローガンです。
その運動があったからこそ、メーカーも芸術家を連れてくることが
出来るようになり、モノ作りが発展するようになりました。
そして、その運動が花開いたのが50年代のモダンデザイン黄金期です。

―お店には北欧の作家、作品が中心に置かれていますが、
北欧のどこに魅力を感じていらっしゃるのでしょうか。

お店の商品はスウェーデン、フィンランドが中心ですが
元々北欧だけにこだわっていた訳ではなく、たまたま北欧のものが自分にしっくりきたんです。
北欧の人々の控え目な人柄や、ものづくりにこだわる姿勢は
日本人に似ている所も多い気がします。

―商品の目利きをする際には何を重視されているのでしょうか。

いろいろな要素のバランスだったりするんですが、
強いて言うなら、ただデザインが良ければ良いと言う訳ではなく、
質感や機能性、フォルムの良さを備えたものを選んでいます。

―4月に開催した「白いテーブルウェア展」もそうした意思の表れですよね。

はい。装飾のない白いプロダクトのみをお店に展示したんですが、
意図を伝えるにはなかなか難しい展示でした。
元々表面的な装飾、デザインだけが評価されていることに疑問を感じていて、
装飾を取った状態でもフォルムがどれだけよく見えるかを伝えたかったんです。
フォルムが良いから装飾が生きるし、フォルムを活かすデザインがあるから良いと思うんです。

Elephant*吉田安成

OUTSIDE

ー買い付けは具体的にどこの国に行かれているのでしょうか。

これまで行先はスウェーデンが中心で、
フィンランド、デンマーク、オランダ、ベルギー、ドイツにも行きました。
北欧は大体のものは見ることができたので、今後は違う国にも行ってみたいと思います。

―場所はどういった所を回られているのでしょうか。

買い付けはどこに何があるか全くわからない状況で向かいます。
朝早く起きて、電車やバスを何時間も乗り継ぎ様々なマーケットを転転とするハードな旅程です。
実際に現地に買い付けに行ってもアタリに出会えない時もあれば、
買い付けた商品が破損することもよくあります。
向こうの郵便事情はひどいので、買い付けた商品の梱包はとても苦労します。

―値付けはどのようにされているのでしょうか。

いくらで買ったからいくら、ということでは値付けをしていません。
量産されているものは出来るだけ使ってもらいたいのでなるべく安く値段をつけるようにしますし、
希少できちんとした価値を付けるべきものには、安売りするようなことはせず、それ相応の値段をつけています。
あとは、自分の思い入れの強さによってですかね。

Elephant*吉田安成

―お店に並べる商品にはどのような基準をもっているのでしょうか。

自分が気に入ったものを売っています。
ただ売れるものだけを扱って商売するんだったら別の業種でもなんでも売れるものを売れば良いし、
お店を構えている以上、自分の審美眼を信じて自分が気に入ったものを扱っていきたいと思うんです。

―好きな作品をお店に置く事と、売上を上げることには葛藤が起こる気がするのですが。

好きなものを貫くか売れるものを選ぶか。商売は本当に難しいですよね。
以前、自分の好みではなくても、お客さんの要望が多かった商品を買い付けたことがあるんです。
でも、僕自身がお店に立っているからには自分の世界観を見てもらいたいし、
そうなるとやっぱりそういう気持ちで買ってきたものは結局店頭に出せず、
商品をしまい込んでしまったんです。
それって、好きな人にも失礼だし、モノもかわいそうだなと思って、
それ以来は自分が好きじゃない商品を買い付けることはやめるようにしました。
好きなものじゃないと、勧められないんですよね。
好きなものと売れるものが重なると良いんでしょうが、なかなか難しいですね。

―お店に立つ上で大切にされていることはありますか。

お客さんとの会話を楽しむようにしていて、
出来るだけ自分から声を掛けるようにしています。
お店を構えている限り商品を目で見て、手に取ってもらい、
お客さんとの会話を楽しんで商品の良さを知ってもらいたいと思います。

―最後に、今後の展望をお聞かせください。

展示会は昨年同様、年3回くらい行うつもりです。
個人的に最も思い入れのある作家、エリック・ホグランの展示を今年もまたやろうと思っています。

商品は今後、時代や国にこだわらず新しいプロダクトも取り入れていくつもりです。
今までも少しは扱っていたのですが、圧倒的にヴィンテージのものが多く
ヴィンテージのお店として認知されていると思うので、
もちろんヴィンテージがメインにはなりますが、それだけにこだわっていることもないですし、
実際の生活において全てがヴィンテージとなるとなかなか現実的ではないですよね。
現代の生活に合ったものを僕なりの目線で紹介していきたいと思います。

人との出会いだったり、自分の興味だったり、考え方もどんどん更新されていくので、
新しいものを自分の中にも入れていきたいと思います。

ちょうど今がお店の転換期です。

fairgroundは今後もElephant*、吉田さんの活動を応援していきます。

変わりゆくElephant*にご期待ください。

Elephant*
open:12:00-19:00 / 火曜日定休
address:東京都渋谷区神宮前4-14-6表参道ハイツ103
access:東京メトロ 銀座線・半蔵門線・千代田線 表参道駅 A2出口より徒歩4分
tel&fax:03-5411-1202
http://www.elephant-life.com/

撮影:natsu
編集:masa